カブトムシは残った

 お店で買ったカブトムシを大事に育てていました。夏が終わってからも、大事に手入れをしていたら、翌年もまたカブトムシの子供が生まれました。そうして何年かが過ぎました。

 ある夏の日のことです。お使いに行こうとして、自転車の鍵を握って家を出ました。『そうだ、そろそろカブトムシを飼うのをやめようかな』と思い、カブトムシを近くの森に逃がすことにしました。カブトムシをつかんで、森のそばの竹やぶにきました。

 カブトムシ君、長い間ありがとう。そう言いながら、カブトムシを竹やぶの中にポーンと投げました。そのとき、急に手に痛みが!! イテ!!

 手を見ると、しっかりカブトムシがしがみついているではありませんか。じゃあ今投げたのは何だろう??

 ア!! 投げてしまったのはいっしょに持っていた自転車の鍵だったのです。